天照大御神(あまてらすおおみかみ)さまは、孫の邇邇芸命(ににぎのみこと)に三種の神器である八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・八咫鏡(やたのかがみ)・草薙剣(くさなぎのつるぎ)を授け、豊葦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)を高天原(たかまのはら)のようにすばらしい国にするために、天降(あまくだ)るように命じました。
　さっそく邇邇芸命(ににぎのみこと)が高天原(たかまのはら)に住む天神(あまつかみ)をともなって天降(あまくだ)ろうとされると、あやしい光を放つ神さまがいました。天照大御神(あまてらすおおみかみ)さまは不思議に思われ、天宇受売(あめのうずめのみこと)命という女の神さまを遣わして、どうしてそこにいるのかを問わせました。その神さまの名は猿田彦神(さるたひこのかみ)といい、邇邇芸命(ににぎのみこと)が高天原(たかまのはら)から天降(あまくだ)られることを聞き、お迎えにあがったのだと答えました。
　そこで邇邇芸命(ににぎのみこと)は猿田彦神(さるたひこのかみ)を先導に、いくえにも重なった雲を押し分け押し分け、日向(ひゅうが)の高千穂(たかちほ)の峰に天降(あまくだ)られました。そしてそこに立派な宮殿をお建てになられました。
　ある時、邇邇芸命(ににぎのみこと)は、それは美しい乙女に出会いました。大山津見神(おおやまつみのかみ)の娘、木花咲耶姫(このはなのさくやひめ)でした。ところが、木花咲耶姫(このはなのさくやひめ)は一夜にしてみごもられました。命(みこと)は姫(ひめ)が他の神の児をみごもったと疑(うたが)いました。そこで姫(ひめ)は身の潔白を示すため、戸が一つもない産屋(うぶや)を作り、その中で児を産むことにしました。もしお腹の児が命(みこと)の子供でないならば、焼け死ぬであろうといって産屋(うぶや)に火を放ちました。火はみるまに産屋(うぶや)をつつみましたが、その燃え上がった炎の中で、不思議にも姫(ひめ)は三人の児を産みました。
　疑(うたが)いも晴れ、邇邇芸命(ににぎのみこと)と木花咲耶姫(このはなのさくやひめ)は、末永く高千穂(たかちほ)の宮で暮らしました。

神名・地名表記の漢字には他の文字があてられる場合もあり、別名を持つ神々も多くいらっしゃいます。