日本の国土(こくど)ができると、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)・伊邪那美命(いざなみのみこと)は多くの神さまを生みました。ところが、火の神さまを生むと、伊邪那美命(いざなみのみこと)は大火傷(おおやけど)を負(お)って亡(な)くなられました。
　悲しさのあまり伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、死者の国である黄泉(よみ)の国へ、伊邪那美命(いざなみのみこと)を連れもどしに出かけて行きました。しかし、黄泉(よみ)の国の食事をしてしまった伊邪那美命(いざなみのみこと)は、もうもとの国には帰れません。伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が迎(むか)えに来たことを知った伊邪那美命(いざなみのみこと)は、くれぐれも自分の姿(すがた)を見ないよう伊邪那岐命(いざなぎのみこと)に言い残し、黄泉(よみ)の国の神さまのもとへ相談に行きました。
　もうどれくらいたったことでしょう。待ちきれなくなった伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、髪にさしていた櫛(くし)をとって火をともし、あたりを見回しました。何としたことでしょう。妻の姿が見るも恐ろしい姿となって、そこに横たわっているではありませんか。あまりの恐ろしさに、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は逃げ出してしまいました。自分の姿を見られた伊邪那美命(いざなみのみこと)は、髪を振り乱しその後(あと)を追いかけました。
　黄泉(よみ)の国の入口まで逃げて来た伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、大きな岩でその入口をふさいでしまいました。伊邪那美命(いざなみのみこと)は、自分を見ないでという約束が破(やぶ)られたことを悔(くや)しがり「あなたの国の人を一日千人殺してしまおう」と言いました。これに対し伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は「それならば、私は一日に千五百人の人を生もう」と告げました。
　それ以来、一日に多数の人が死に、より多くの人が生まれるようになったということです。

神名・地名表記の漢字には他の文字があてられる場合もあり、別名を持つ神々も多くいらっしゃいます。